第9章 初めての朝
鉢「くくっ…、お前もしかして私が怖いのか?」
「え、ちょ、やっ!」
三郎はゆうきの腰に片手を回すと、反対の手で顎をクイッと持ち上げた。身長の低いゆうきは必然的に三郎を見上げる形になり、悔しさで唇を噛む。
鉢「一般人ならなぜ私と雷蔵の違いを一瞬で見抜ける?忍者でも見抜けないのに。ど素人にバレるような変装はしていないのだが?」
三郎は両手を下の方にさげると、物凄い力でゆうきの尻を掴んだ。
「いだっ、痛い痛い痛い、やめてくださいぃ…!」
鉢「なぁ、何で分かった?答えろよ。」
「っう、雰囲気…!雰囲気が違ったんです!根拠はないからなんて説明したら良いか分からないですけど…。」
鉢「あ、そう。まぁいいや。で、お前はここで何してるんだ?怪しい動きをしていたが。井戸に毒でも入れようとしていたのか?」
やっと三郎が尻を掴む力を緩め離してくれた。ゆうきは痛む尻を押さえながら答えた。
「顔を洗おうとしてただけですよ!」
怒ったようにそう言うと、ゆうきは縄のついた桶を井戸の中に沈め、水を汲み上げようとした。
(構造が分かれば、井戸くらい使えるもんね〜)
しかし、なみなみと水の入った桶を引き上げるのは、非力なゆうきには至難の業であった。