第21章 女の嫉妬
「は〜、いいお湯…」
ゆうきは広い浴槽で足を伸ばす。
窓の柵から月の光が差込み、水面に揺らぐ。
今夜は月が綺麗だなぁ…そんなことを思いながら、ゆうきは目を瞑った。この世界に来てもう2週間。元の世界に戻る糸口は何も見つからないまま。ずっとここにいても何も解決しないのではないか、でもどうすることもできない…、そんな焦る気持ちを隠すよう、ゆうきは両手で掬ったお湯をバシャバシャと顔にかけた。
その時…
ガラガラガラと、戸が開く音が聞こえて来た。誰かが脱衣所に入って来たようだ。
ゆうきは静かに耳を澄ます。
「はー!!今日もいい汗かいたなー!!」
「…モソ」
「次は10kg算盤を持って、裏々山にでも行くか。」
聞き覚えのある声にゆうきは心臓が飛び出そうになるほど驚いた。
忍たま達の声だ…。
(え、なんで!?男湯と女湯入れ替わってるのに気づいていない!?)
そうこうしているうちに、入って来そうな忍たま達。
ゆうきは慌てて、月の光が当たらない風呂の奥で息を潜めた。