第1章 【さとし】の日常。
先程とは打って変わって
舌を強く激しく絡め、吸われるキス。
息をするのも忘れるくらい
僕は初めてお客様相手に翻弄された。
この仕事を始めて、デリへルなんて
お客様を悦ばせる為だけのものだと思ってた。
それを裏付けるように、
お客様から指名が入ってホテルへ向かい
部屋に通された時、目にするのは。
いつもの様に、全裸で待っておられる
お客様だけ。
それが当たり前だと思う。
だってセックスをする為に利用するんだから。
それが本来の目的だと僕はずっと
そう思って、それに答えるように仕事を
し続けてきた。
けれど今日は。
こんな風に、お客様と駆け引きをするのも
どっちが主導権を握るのか争うのも。
何もかもが初めてかもしれない。
けど、だからって。
そう簡単に、僕が堕ちる訳ないけれどね。
僕はいつだって、堕とす側にいないと
意味がないのだから。
お客様に堕ちて、沢山のお金を
僕に貢いで貰わないと。
「…っ、んあ、んっ、んく、ぅ、はっ、ぅ」
僕は、相葉さんのキスに翻弄されているような
素振りを見せながら
少しづつ後ろへ後退りをする。
それでも離れない、強い強い口付け。
僕もそれに応えて見せようと、
強く舌を捩じ込み返す。
僕の左のふくらはぎにベッドの角が当たった瞬間。
僕は、相葉さんの首へ回した
腕を力いっぱい引き寄せ、
ベッドへ沈み込むように、誘う。
ベッドへ倒れた衝撃で、身体が弾み
相葉さんとのキスがそこで途切れた。
「んぁ…っ、ふふ、ここまで来てしまいましたね」
雅「多少酷くしても大丈夫だと聞いてるよ、どうなのかな?」
少し息を切らせながら、僕にそう訪ねる
相葉さんに、微笑み返しながら応える。
「相葉さんがそうしたいなら…」
雅「そっか、でもまぁ…俺はあんまりそういうの好きじゃないから止めとくよ」
「そう、優しいんだね…?」
雅「さぁ、それはどうだろうね?」
ベッドへ誘い込んでも、駆け引きは続く。
このスリルがたまらなく楽しいけれど
僕の仕事はこれからだから。
相葉さんには、僕の太客に
なってもらわないとね…?