第1章 【さとし】の日常。
結局、舌を挿入される事のないまま
相葉さんの唇は離れていった。
離れていったあとも、その端正な顔は
微笑みに包まれたままで。
やっぱり気味が悪い…。
どうしようもなく、その仮面を
取り払ってしまいたい衝動に駆られる。
貴方のその仮面の下には、きっと
醜く哀れなまでに、情欲が隠されているんでしょう?
だったら、それを総て僕に曝して。
ぶちまけて、見せてみてよ。
そう思った僕は、根っからの負けず嫌い。
先程のからかいをバネに仕返してやりたい。
僕は、相葉さんへ挑むように
相葉さんの首へ腕を回し、耳元で囁いた。
「本当の貴方は、そんなものじゃないでしょ?」
雅「何を言うんですか…」
「分かりますよ、僕をあまり見くびらないで下さい。僕だってこの仕事にプライドを持ってしてるんです」
雅「ええ、もちろん承知ですよ?」
僕は相葉さんの項へ右手を這わせ
更に距離が近くなるように、押さえ込む。
「だから、本当の貴方はそんな理性的じゃない。心の奥に隠してるんでしょう? 渇望する程に望んだ欲を…」
雅「……」
そう囁いた時、相葉さんがここへ来て初めて
ゴクリと喉を鳴らし動揺を見せた。
…さあ、ここからですよ。
「総て僕に見せて下さい、貴方という欲の塊を…その為に僕を呼んだんでしょう? わざわざオーナーまで使って」
そこまで耳元で囁いて、相葉さんの
正面へ姿勢を正すとその瞳は飢えた獣のようだった。
雅「やはり貴方には適いそうにない…俺がオーナーから貴方を奪おうとして呼ばせたこともお見通しですか?」
「もちろん…」
嘘だけど。
まさか、そんな企みをしていたなんて思いもしなかった。
カマをかけたつもりが図星をついていたとは
流石に僕にも予想できなかった。
でも、これでやっと…。
雅「じゃあもう嘘は通用しないね…遠慮なく」
「あっ、んんっ…んぅ、はっ、ん」
相葉さんは人が変わったように
僕へ激しい口付けをした。
さあ、僕に堕ちて……。