第2章 【かずなり】の日常。
痛いほど静寂な部屋に、俺の
衣類を床に落としていく音だけが
大きく響いていた。
残り下着一枚だけの姿になって。
心臓を大きく脈打たせながら
俺は、自分の下着へ手をかけた。
下に下げようとした時、
それを止めるように
櫻井さんの大きな手が、俺の手を取った。
何故こんな事をするのかと
顔を上げてみれば。
いつの間に取り出していたのか、
口に咥えタバコをして、眉間に皺を寄せた
険しい顔の櫻井さんがいた。
…俺、何か間違ったことしたか?
果たして自分が一体何をしたのかと
考えを巡らせていると。
翔「…そそられないな」
「え…?」
唐突に吐かれたその言葉に、
俺は、思わず呆気にとられてしまう。
そそられないって、つまり俺には
反応しない、勃たないってこと…。
自分の何が駄目だったのかと
櫻井さんの強い瞳に負けないように
俺も、彼を見つめ返した。
翔「何故そんな不思議そうな顔をする…? 自分に男を誘う魅力がない事に気付かないのか? 君の身体はまだまだ子供。 次も指名してやるから、今度は俺をその気にさせてくれ」
嘲笑うかのような口調でそう言われて。
その言葉の一つ一つに、呆然としていたら
俺の手に万札が10枚ほど握らされていた。
はっとして、振り返ると扉の前で
ドアノブに手をかけている櫻井さんが。
「え、あ…ちょっと、待ってください…っ!」
翔「今日の所はこれで終わりだよ、カズくん」
そう言って、颯爽と部屋を出ていってしまった。
俺は、下着一枚だけの姿のまま、
その場に崩れ落ちた…。