第2章 【かずなり】の日常。
「はっ、はっ…くっ、ぅ」
息が出来なくて苦しい。
苦しくて苦しくて、ただ揺さぶられている事しか出来ない。
少しでも、息苦しさから逃れようと
声を発して見てはいるけれど。
か細く、蚊の鳴くような声しか
音になって響いてくれない。
次第に声も出せなくなって。
抽挿と首を締められて、頭は酸素不足。
俺は、無意識のうちに客の肉棒を
喰いちぎる勢いで締めつけていたらしく
客が顔を歪めて果てていた。
俺は、達することのないまま
苦しさから開放されるのと同時に
意識を手放した。
再び意識を取り戻して目を開けた時には
客の安藤さんは居なかった。
あいつ、あんなことまですんのかよ。
次から店長に相談して、NGにでも
してもらおうかな…。
加減を知らな過ぎて、何をし出すか分からない。
俺は、喉を擦りながら重い腰をあげ
ベッドから這い出た。
「あ、ああ…っ、んん、声は死んでないか」
あれだけ締められても声は
無事だったみたいで助かった。
次にも予約が入ってたはずだから。
俺は、ホテルでシャワーを浴びて
汚れを洗い流し、身支度をしながら
スマホを触る。
そしたら、店から一件の着信が来てて。
慌てて折り返しの電話を入れた。
数コールなった後に、電話の向こうから
店長の低い声が響いてくる。
「もしもし、和也っす…どうかしました?」
『ああ、接客中にすまなかったな…お前の指名入れてた客が、キャンセルしてな。代わりに智に指名を入れてた客の方に行ってほしいんだ』
「え、それって智さんの客と…って事っすよね? 良いんすかね、そんな事しても」
『ああ、大丈夫だ。その客、初回の人で特に指名したい人も居ないからって俺が勝手に一番の智にしておいただけなんだ。智は相変わらず忙しいみたいだしな』
「わっかりました…どこに行けばいいですか?」
俺は、店長から聞いた通りのホテルに
そのまま直行した。
それが俺の運命を狂わすなんて、
この時はまだ思いもしなかった。