第1章 【さとし】の日常。
ひとしきりはしゃぎ回った後、
僕は放心して、ベッドで仰向けに
天井をぼうっと見つめていた。
朝までセックス漬けだった身体が
はしゃいでる僕に、悲鳴をあげて。
「はぁ、凄い疲れた…」
僕以外誰も居ないホテルの部屋へ
ぽつりと呟いて、目を閉じようとした時。
耳をつんざくようにして、
僕のスマホが鳴り響いた。
「うっるさい…」
寝ようとしていた僕は、
マナーモードにして、再び目を閉じた。
そうすれば、今度はホテルの部屋が
うるさいほどのベルの音で包まれて。
何度も何度も、ベルを鳴らす音で
眠れそうになかった。
仕方なく、重くなった腰を押し上げて
そばにあったバスローブを手繰り寄せて。
ゆっくりと扉を開けた。
そしたら…。
『ちょっと、いい加減にして下さいよ!』
「うっ…やめて、頭に響く」
『んなこと知りませんよ! 僕に車で何時間待たせるんですか…てか、そんなだらしない格好のまんまだし』
「だって朝までコースだったんだもん…分かってるでしょ? はぁ、やめてよ疲れてるのに…朝から侑李の説教なんか聞きたくないよ」
侑「僕だって、わざわざ迎えに来て、年上の貴方に説教なんかしたくありませんよ…」
「あーはいはい…」
侑「…って欠伸してるし」
この、扉を開けた瞬間に怒鳴って
僕に説教を垂れているのは、
お店の内勤くんの、知念 侑李。
可愛い見た目してるんだから
売り専やれば良いのにって勧めたら
『自分の身体、安売りしたくないんで』
って返ってきた。
凄いしっかりしてるんだろうけど
結局は、こんなお店で内勤しちゃってるし。
それは良いんだ、なんて思ったりした。
本人にはツッこまないけどね。
僕は、だらだらとまだふわふわする
頭の中で服を身につけ、お金の入った
茶封筒を握り締めて、侑李に連れられ、
迎えの車に乗り込んだ。