第16章 欠けていたピース
魅威:今晩は日番谷隊長、翔に頼まれたのでお持ちしました。
隊所室の隊長部屋がノックされ、扉を開ければそこにはあの祭の時以来だろう。皇魅威が、少し苦笑しながら挨拶をしてきたのである。
日番谷:いったい何を?
俺が質問をしようとしたら魅威は懐から包装紙を何個か取り出し、俺に渡した。魅威は溜め息を吐きながら「澪以外には使わないで下さいね、その薬」と告げたのだ。
日番谷:これ何だ?
その言葉に魅威は何処か溜め息を吐き、俺を静かに見つめた。そして、俺に人差し指を口許にあて「聞かない方が良い」と答えた。
魅威:守りたい意思があるかわかないけど、これはあの子の問題。だからあの子が話すまでは見守って下さい。
俺はただ「いつか話してくれるのか?」そう問えば、魅威は少し微笑み「それを決めるのは零です」と答えた。
そして、魅威はその場を去ったのだった。
翔:あの事件の欠けていた情報が揃いつつある。後は
澪のこの状況に翔は舌打ちをしていた。覚悟は決めていたことだ。だが、こんな結果を誰も望んでいない。
翔:もう日番谷隊長なしでは生きられないかも知れない。
翔はただ静かに今の状況を見極めていた。
突然の発熱。それは前兆に過ぎないのも自覚していた。
翔:澪が目を覚ました時点で決めよう
おそらくはそれが、この一時の安らぎを壊すきっかけになるかもしれないと自覚しながら・・・。
翔:なぁ、遙・・これで、良かったのかよ。お前最初から氷輪丸の主知っていたよな
空を仰ぎながら翔は微かに呟いた。自分の体を抱きしめるように、手に力を込めて・・・。
翔:もう俺は・・・
この事実を知るのはもはや護廷十三隊にはあまりいない。それでも、真相を知る者は動くのだろうと自覚して、俺は溜め息を吐いた。
日番谷:この薬一体何なんだ?
あんなに苦しそうに熱にうなされていた澪は、薬を飲んでからは俺の隊主羽織りを握りしめていたが、落ち着いたように眠っていた。
日番谷:結局俺にはわからないことだらけだ
それでもこの感情はいつから生まれたのか俺にはわからない。何処か寂しい気持ちも悔しい気持ちもある。けれど、何故か、この時だけが俺の感情を戸惑わせた。
日番谷:何故だろうな・・・いなく・・・いなくならないでくれ
俺はただ小さく呟いた・・・。