第14章 異世界生活七ヶ月目
数日後、ボランティアの日。
シドは数日前に見た光景を思い出してはため息をつく。
(はあ…あいつら付き合い始めたのか…)
数日前に見た光景とは、トランクスとのデートの事だった。手こそは繋いでいないものの、二人の間の距離は手がぶつかりそうなほど近かった。
シドは二人が幸せになることを望みながらも、心の端ではのことを諦めきれずにいた。
「おはよ、シド!」
そんなシドの思いはつゆ知らず、は元気に挨拶をする。
「おう!はよ、!」
そんな心情を悟られないようにニカッと笑うシド。
「はい、これあげるね!」
「なんだ、これ?」
「今日はバレンタインでしょう?だからチョコ持ってきたの!」
「ああ」
今日は二月十四日。バレンタインか…
「いいのかよ?トランクスと付き合い始めたのに俺なんかに渡して。」
「へ?」
は首を傾げる。
「私、トランクスさんとは付き合ってないよ?」
「え!?だ、だってこの間デートしてるとこ見かけたぞ?」
「あれは確かにデートのつもりで誘ったけど…。でも付き合ってるとかそんなんじゃないよ。」
「そ、そうなのか…」
ホッと一息つく。
(いやいやいや、なに安心してんだ!)
「それにシドは大切な友達だから…ね?」
そう言ってシドの手にチョコを握らせる。
の暖かい手から伝う熱に全身が火照るのが分かる。
上目遣いで見上げられ、手を握られる(正確にははチョコを渡そうとしただけだが…)という状況。
シドはの手を引き自分の胸に引き寄せる。受け取り損ねたチョコが地面に落ちる。
ぎゅっと力任せに抱きしめる。
「ごめん、俺もう我慢出来ない。のことが好きだ。」
「え…?」
信じられない言葉が聞こえた気がした。
「お前がトランクスのことを好きなのは分かってる。それでも好きなんだよ…」
「シ、シド…?」
シドは体を離しの顔を見つめる。
「困らせて悪いけど、後悔はしてない。返事は後でいいから。」
「あ、う、うん…」
「じゃ、俺今日は帰るわ。また明日。あ、これは貰ってくよ。サンキューな。」
そう言って足早に去るシドを呆然と見つめる。
一体いつから…?