第11章 異世界生活四ヶ月目
あれからはバイトを始め数週間が経った。まだトランクスにはバレておらず、順調に事は進んでいた。
この日も、は朝の6時に起床した。バイトの支度を始め音を立てないようにゆっくりと家を出る。
は本屋でバイトを始めたようだった。幼い頃から本を読むのが好きなにとっては適職だった。
「おはようございます。」
職場につき、制服に着替える。
基本の業務はレジと品出しだ。は仕事を覚えるのが早く、既にどちらも一人でこなせる様になっていた。
ここの本屋は街で一番人がよく来るところだった。規模こそは大きくないが丁寧な接客と豊富な品揃えで有名だ。
最初はこれだけ人が来るとトランクスにバレないかと不安だったが、トランクスが本屋に訪れることはなかった。
…しかしこの日は違った。
お昼休憩に入り、午後の仕事に取り掛かる。
「すみません、この本を探しているのですが…」
「はい、かしこまりまし…た…」
はその客を見るなり固まってしまった。見慣れた紫色の、サラサラの髪。
(ま、まずい…!トランクスさんだ…!)
トランクスは店員が固まった事に気付き、伏せていた顔をあげた。
「…?えっ…!?さん…!?」
「あ、えーっと、こちらの商品ですね!少々お待ちください!」
はいちかばちか、気付いていないフリをする。
トランクスはそんなの様子に目ざとく指摘する。
「さん、気付いてますよね?なぜバイトなんか…」
「あ、あはは…」
「笑って誤魔化さないでください!」
「す、すみません…えっと、これには訳がありまして…あと少しであがるので、待っていてください…」
「わかりました、向かいのカフェにいます。」
終わった…はそう思った。
バイトを終え、トランクスが待つカフェへと向かう。
「すみません、お、お待たせしました…」
席に着き、緊張で心拍数があがった心臓を落ち着かせるように先程頼んだホットカフェラテを飲んだ。
「さん、別にオレは怒ってませんよ。」
「え…?」
怒っていると思っていたは呆気に取られる。
「ただ、なぜオレに言わなかったのかと思っただけです。なにか理由があったんですか?」