第8章 異世界生活一ヶ月目
「トランクス、向こうに着くまでにはその顔なんとかしろよ。」
「分かってます。」
「しかし初恋かあ…甘酸っぱいねえ」
ニヤニヤとからかってくるシドを横目に、トランクスは平常心を取り戻すため必死だった。
「もういいですよ…いいですか、くれぐれも本人には言わないでくださいよ。」
「わぁーってるって!信じろ、俺を!」
トランクスは疑い深い目でシドを見つめる。
「ほら、姫が見えたぞ!」
遠くに見えるを「姫」と呼ぶシドに、
「はあ…いい加減にしてください…」
とまた少し赤く頬を染めて抵抗した。
遠くにトランクスとシドの姿を発見したは、あ!と声を上げてこちらに手を振り駆け寄る。
「お疲れ様です!わあ、ほんとに凄い荷物ですね…手伝いましょうか?」
「いえ、重いので大丈夫ですよ。」
トランクスは至極冷静を装い答える。隣ではシドが今にも吹き出しそうな顔をしている。
「なあ、って今気になるヤツとか…」
「シ、シド!」
トランクスは思わず呼び捨てでシドの名を呼びシドの口を手で塞ぐ。
「なんでもありません!」
と慌ててに向かって言う。
「あ…はい、分かりました…?」
(いつの間にあんなに仲良くなったんだろう…?)
は疑問に思いながらそんな二人をよそに、作業を再開した。
「シド…」
今までに聞いたことの無いほど低い声で話すトランクスに、シドはしまったやりすぎたか、と慌てて謝る。
「ご、ごめんて!ついいじりたくなるんだよなー!ははは…」
「全く…今度やったら承知しないからな」
「分かった!もうやらねえよ!」
今までに聞いたことの無いトランクスの冷たさを帯びた声に、コイツは怒らせてはいけない…と心に誓ったシドであった。
その日、トランクスは自覚した恋心に落ち着かず、全く作業に身が入らなかった―。