第1章 導かれて
かつて小さい頃に読んだ図鑑。
その名も絶滅動物図鑑。
その中でも一際存在感があった動物…それは恐竜。
その動物が、今目の前にいるのだ。
は頭では信じられないと思いつつも、体は逃げの姿勢を取っていた。
しかし、相手は大きさも異なれば歩幅も異なる。
あっという間に追いつかれてしまった。
は死を悟り、地べたに座り込みぎゅっと目を瞑る。
鈍い光を放つ牙が、の頭上にさしかかる。
(もうダメ…!)
そう思った次の瞬間。
「危ない!」
その声とともに、サッとは体をすくうようにして抱きかかえられた。
「ふう…間一髪でしたね。」
は、その声の主を何が起こったか分からない、といった様子で見上げる。
サラサラの藤色の髪に、意志の強そうな青い瞳。
今までに見た事のないほど整った顔立ちは、僅か数センチのところにあった。
「修行をしようと移動していたら、貴方が追いかけられているのを見かけて…怪我はありませんか?」
「えっと…その…私…」
は命の恩人の問いかけに応えようとするが、上手く言葉が出てこない。
頭の中は恐竜に追いかけられた事よりも、"宙に浮かんでいる"この状況が理解できなかった。
それだけではない。
見慣れない景色に、存在しないはずの動物。
更には空に浮かぶ少年。
はオーバーヒート寸前だった。
どうして?
なんで?
私は一体どうなってしまったの…?
疑問と不安がつのり、ショックを受けたのかは気を失ってしまった。
――。
「んん…」
次に目を開けた時見えたのは、これまた見慣れないベットの上だった。
「あっ、気がつきましたか?」
先程救ってくれた少年が心配そうに覗き込む。
「あっ…その…」
まだショックから立ち直れないのか、言葉が曖昧になる。
薄紫色の髪をした少年もそこは分かってくれたようで、
ゆっくりでいいですよ、と笑顔で応えてくれた。
はその笑顔に安心したのか、つられて笑顔がこぼれる。
助けてくれたのだから、悪い人ではないはず…
は、思い切って少年に声をかけてみた。
「あ、あの、すみません…えっとその…」