第1章 導かれて
ある冬の日。
は降りしきる雪の中を一人、転ばぬよう注意しながら歩いていた。
学校への道を歩く時、は普段なら音楽でも聴きながら歩くところだが、
今日はなぜか何も聴かずに黙々と進んでいた。
今日は月曜日。週の初めということもあって気分はあまり良くなかったが、
冬の凛とした空気は心をもしゃんとしてくれている気がした。
(今日はよく冷えるな…)
白い吐息を見つめ、そんな事を呑気に考えながら歩いていた。
あと半分で学校に着くといった所で、
突如なんの前触れもなく目の前に
不思議なオレンジ色に光る雪のようなものがふわふわと目の前に降りてきた。
「なんだろ…これ…?」
は不思議に思い、スっと
その雪のようなものに手を伸ばす。
すると途端に、
は突然激しい目眩に襲われた。
(っ…!?)
ぐらり、と視界が歪む。
足元が崩れるような感覚に襲われ、平衡感覚が失われた。
一瞬、ぱっとオレンジ色の光りが辺りを照らしたかと思えば、
それはを包み込み消えてしまった。
は遠のく意識の中、誰かの声が聞こえた気がした―。
ピピッ ピピピッ…
「ん……」
鳥の鳴き声が聞こえる。心なしか冬の割にやけに
太陽の光が強い気もする。
今は季節は冬のはず…
そこでは自分の身に起きた異変に気づいた。
バッと起き上がり辺りを見回す。
「え…?」
思わず独り言を呟く。
答えなど帰ってこないとわかっていながらも、声が継いで出てしまった。
「どこなの…?ここは…」
見渡す限り辺りは草原。
所々木も生えているが、今まで見てきたそれとはどこか雰囲気が異なる。
それに、見たことの無いような野生動物もいる。
の思考は完全に停止していた。
夢とも思えないリアルすぎる感覚に恐怖を覚え呆然としていた。
ドンドンドン…
「えっ、なんの音…!?」
そんなを正気に戻すかのように、突然遠くから地響きのような低い音が聞こえる。
それはだんだんと近づいて来るようで。
ドンドンドンドンドン…
はそこで気付いた。
これは、足音だ…。
後ろを振り返ったときには遅かった。