第6章 心の隙間
きゅっとトランクスの体を包み込むように抱きしめる。
「えっ…と…」
突然の出来事に呆気に取られるトランクス。
「トランクスさん、泣いていいんです。今まで本当によく頑張りました。もう、一人で戦わなくていいんです。何も知らないのにすみません。でも、今にも泣きそうに見えて…」
私が泣くなんてダメですね、とは力なく笑う。
そんなの腕の中で、トランクスは自分が本当は誰かにこうされたかった事を知った。
誰かに、よく頑張ったねと
誰かに、もう君は張り詰めて生きていかなくていいんだ
誰かに、泣いていいんだよ
ありきたりな言葉で構わない。
そう言って抱きしめてほしかったのだ。認めてほしかったのだ。自分の辛さ、苦しさを。
「あ…」
一筋の光が頬を伝う。
その時ふと、抱きしめているの後ろに片腕の戦士の姿が見えた。
―トランクス…よく頑張ったな。君は、僕の、世界の、皆の最後の希望だったんだ。ありがとう、トランクス…―
そう、確かにはっきりと脳裏に聞こえたその声は、紛れもなく尊敬してやまない悟飯の声だった。
(悟飯さん、オレ、やりましたよ…貴方に一番に伝えたかった…
ありがとう、悟飯さん…)
心の中でそう呟く。
そのありがとうには色々な気持ちがこもっていた。
人生で二度目に流した涙は、すぐにかわいて消えた。しかし心にあった深い悲しみは、不思議なことにもう跡形もなく消えたようだった。
に抱きしめられどれくらい時間が経っただろう。
「あの…もう大丈夫です」
はその声を聞きスっ…と離れる。
「急にすみませんでした。でも、なんだかああでもしないとトランクスさんがどこか遠くに行ってしまうような気がして…」
まゆはそう言うとトランクスを見上げる。
トランクスの目は少し赤いが、瞳は明るさで満ちていた。
「不思議ですね…貴方のおかげで今まであった心の痛みが消えました。自分ですらこの痛みに気づかなかったのに…」
ありがとうございます、と照れた笑いでそう言った。
はトランクスに礼を言われ、
「良かった…トランクスさんの笑顔、今までとは違って楽そうに見えます」
と、心から安堵した様子でニコリと微笑む。
そんなを見つめながらトランクスは考えていた