第6章 心の隙間
続けてトランクスは言う。
「こうなった事も、忘れては行けない事実なんです。それに、この出来事を忘れることはオレの師匠である悟飯さんとの思い出も忘れる事になりますから…」
切なそうに笑うトランクスに、思わず胸がぎゅっとなる。
師である悟飯さんが亡くなったあともたった一人、戦士として戦い、やっとの思いで悲願を達成した。この荒れ果てた世界で一人、ただひたすら前だけを見つめて歩んできたのであろう。
きっと私には想像ができない感情や想いが彼の中にはあるんだ…そう悟ったは、彼の気持ちをとても身近に感じていた。
慰めたい、でも私にトランクスさんを慰める資格があるの…?
邪魔な感情が浮かび上がっては消え、上手く言葉が出てこない自分を恨んだ。
トランクスは黙り込んでしまったに気付き、暗い話をしてしまった、と後悔した。
「こんなつまらない話をしてしまってすみません。貴方には関係のない事ですし、そう気を落とさないでください。今は人造人間も消え平和な世界が戻ってきました。」
トランクスはふと空を見上げる。どこまでも青い空。
自分は最後の希望。諦める訳には行かない。そう自分に言い聞かすようにタイムマシーンに書いた「HOPE」の字。
過去に戻っても、自分自身の未来は変わらない。それでも人造人間に支配されない平和な未来を作り出そうとした。暗く光なんて届かない世界。そんな世界で唯一の最後の希望が、自分だった。そう、言い聞かせて今まで生きてきたのだ。
はトランクスに「 関係ない 」と言われたことがショックだった。
確かに自分には関係がない。しかしだからといってこの少年をこのままにしていいのか?
横目でトランクスを見ると、空を見上げているその横顔が、とても泣きそうで悲しそうなものに見えた。
は考えるよりも先に体が動いていた。