第1章 締め切り前の原稿に墨汁こぼせ!
残りの酒を一気に乗って、立ち上がれば
ここに来た時脱いだコートを着せられ
ずいずいと背中を押されて玄関まで押し出される。
しかも玄関のところに置いてあったキャリーバッグまでしっかりと持たされた。
「ほんとに泊めてくれないのね…」
「一二三が居なきゃ泊めてやったかもね」
「先輩のケチ」
「こんな時ばっか後輩ぶってもダメ
バイバイ」
ひらひらと隈でやつれた陰気な顔の横で
手を振られてしまった。
さすがにここまで来てごねるのも社会人として
不味い気がしてきたので玄関のドアに手をかけた。
その時だ。
「ただいまー!俺っちが帰還しましたよぉ…お?
………ひっ!!!!」
金髪のチャラいイケメンがいきなりドアを開けてきたかと思うと人の顔を見て固まった。
多分こいつが一二三だろう。
「一二三…あー、今日は帰ってくるの
早いんだな」
歯切れの悪そうにしてるのは
多分私がとっとと帰らなかったせいで
「同居人」が苦手とする女と会わせてしまった
から、だろうか。
反省反省。