第3章 だからって俺を巻き込まないで
「ねぇ、独歩」
「なに?」
10分ほど経ってようやく落ち着いてきた独歩に
私は声をかける。
独歩は顔を上げて私を見つめ返した。
あんたってさ
気付いてないけど
よく人の顔見つめる癖あるよね。
「手、握ってくれないかな」
「は?」
「…まだ、ちょっと怖くて
私…この手であいつのこと叩いちゃったから、さ…」
“今日会う時は落ち着いて話したいんだ”
と、柄にもなく言えば何故か独歩が
苦しそうな顔をする。
なんでアンタがそんな泣きそうな顔するのよ…。
つられてこっちまで泣きたくなるじゃない。
「だめ?」
「……」
そっと独歩の手が私の手を上から包んでくれる。
あったかい、というより少し汗ばんでるような
そんな気がした。
「なんでそんな嘘つく男選んだんだよ…」
「幻太郎の嘘は幻太郎の個性だから…」
「でも、その嘘に傷付いて俺のところに来ただろ」
「うん…そうね、あの嘘だけは地雷だった
でも私も話を聞かないまま飛び出してきたから…」
あの時は冷静じゃなかった。
でも一晩寝て考えたんだ。
今日ちゃんと話し合って
それからけじめをつけようって。
ちゃんとした理由があるなら許せるかもしれない。
でも、あれが本当に意味の無い
戯れの嘘なら私はもうやっていける自信がない。
「………俺だったらそんな顔させないのに」
「あは、なにそれ告白のつもり?」
独歩の手に力が籠る。
痛いよ、馬鹿。