第1章 締め切り前の原稿に墨汁こぼせ!
「可愛い弟の為だろ、とりあえずいまいる
玄関だけでも掃除しておくかぁ」
ま、不味い!!!!
玄関には私の靴が!
そうよ!私が隠れるより先に
自分の靴を隠すべきだったんだ。
言い訳するならこんなに早く帰ってくるとは
思わなかったし
あの時近くに三郎が居たからで…。
いや、でもまだ誤魔化しきれるかもしれない。
二郎とか三郎は見た感じ学生だから
文化祭で使う衣装みたいなことを言い訳してくれると信じてる。
「そ、そんな!
兄ちゃんは仕事で疲れてるんだからそんなのしなくていいよ!」
「そうですよいち兄、僕が掃除しておきます
僕は二郎と違って
掃除もちゃんと出来ますから」
よーし、いいぞぉ。その調子だ。
その調子で一郎を玄関から遠ざけろー。
「そう言えば、お客様に出す茶請けに冷蔵庫の羊羹出して大丈夫ですか?」
「客?」
「ほら、今晩家に泊める女性の方ですよ」
あ、バレた。三郎許すまじ。
「許可………?あっ、アレか!
あー、いいぞ。そろそろ賞味期限近かったし
丁度いいだろ
それで、その客人はいまどこに?」
「えっとリビングにいるよ」
「そうか
長男として客人にはご挨拶しなくちゃな」
気の所為だろうか、今物陰から覗いてたら
一郎とガラス越しに目が合ったような。
うん、気の所為だ。
気の所為に違いないから
……有栖ちゃん逃ーげよ。