第1章 締め切り前の原稿に墨汁こぼせ!
「…あー、いいよ。大丈夫、全然
1人で平気」
「ダメだよ、シンジュクは何があるかわからないんだから
陰気臭い長髪のジジイとかいるんだよ?」
なんか物凄く特定の個人を指してるような
気がするんだけど…ここはスルーの方向で…。
「ジジイとか余裕で逃げ切れるしだいじょ…おおおおっ? お、おっ、っと…セーフ!」
逃げるが勝ちだと手を振り払って進むも
ピンヒールが変な方向に回って思い切り
身体ぐらつく。
尻もちを着く前に思い切り踏ん張ったせいで
がに股になった。
あっぶな!!!!
「そんなにふらついた千鳥足で
中央区まで1人で帰れるの?」
「無理ですね」
「やっぱり送った方がいいよね?」
「いや、でも中央区は…ちょっと、というか
私いま住む家がなくて、ですね
給料日前でお金もなくて…はい」
なんで私男相手に敬語使ってんだろ…。
もう訳わかんないや。
「ホームレスってやつ?
…と言うより、その大きな荷物を見る限り
飛び出してきたって感じかな?」
「ま、そういうことですね」
ホームレス…。
気付かないようにしてたけど
いざ言われると中々胸に来るものがある。
はぁ、ほんとこれから先どうしよ。
一二三の女性恐怖症とかマジで知らないから
空いてる部屋にでも泊めてくれればよかったのに。
独歩のこんにゃろー。
「ふぅん、なら僕いい宿泊先知ってるよ♡」
「えっ」
あなたは神か。