第1章 愛しい君は半透明人間
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すっかり日も暮れかかってきたため、森を抜けたところで宿営を張ることになった。今日はここで一晩を明かすのだ。
リヴァイは昼間見た人影がどうしても気になり、夜が更けると、こっそりと森へと向かった。
真っ暗な森を馬で走る。
木々の隙間から月明かりが差し込んで、光の筋をいくつも作っていた。
その幻想的な光景に、思わずこれはいつもの夢の中ではないかと錯覚すら覚えてしまう。
森の中は静まり返っていて、リヴァイの走らせる馬の蹄の音しか聞こえない。だが、不思議と不気味な感じはしなかった。
人影を見た辺りの木に、リヴァイは立体機動装置で登ってみたが、当然のことながらそこに人間などいなかった。
だが、リヴァイは聞いた。自身の名を呼ぶ声を。
「リヴァイ兵長」
「!?」
驚いて声のした方を見ると、そこには緑色のマントを羽織った小柄な兵士の姿があった。
「…なのか…?」
リヴァイの向かいの木の枝に、が立っていた。
立体機動装置をつけて兵団のマントをまとった出で立ちは、最後に見た姿と何ら変わりはない。
だが次の瞬間、立体機動装置も使わないのにふわりとの身体は飛んで、リヴァイの立つ枝に降り立った。まるで羽のような軽さだ。
「お前…生きているのか?」
「いいえ…私、この森で死んだんです」
の声が、森の闇の中に淡々と響いた。