第1章 愛しい君は半透明人間
そんな日々を繰り返し、心の整理はつかないままに時は流れ、次の壁外調査を迎えた。
壁を出てすぐに巨人と遭遇し幾度かの戦闘を行ったものの、撤退しなければいけないほどの大きな被害はまだ出ていない。
エルヴィンの指示に従ってある森に入った時、リヴァイは気付いた。
(ここは…の所在が分からなくなった森じゃねぇか…)
巨大樹の森ほどではないが背の高い木々が生い茂る、中規模程度の森。リヴァイが毎夜夢に見る森とそっくりであった。
日が傾きかけているせいで森の中はより一層薄暗く、あまり見通しは良くない。
馬で駆け抜けるリヴァイは、ふと視界の端に、木の枝に誰かが腰掛けている姿を見たような気がした。
(…あ?)
一瞬だけだったが、その者は兵団のマントを着た兵士のように見えた。
リヴァイは横を走る兵士に思わず尋ねる。
「おい、今、木の上に誰かいなかったか?」
「え…?いえ、自分は何も見ませんでしたが…まさか、巨人ですか?」
唐突なリヴァイの問いに不安を感じたのか、兵士は顔を青くする。
「…いや、俺の見間違いだろう。すまない」
リヴァイは再び前を向いた。
(俺の…幻覚だろう。しっかりしろ…ここは壁外だ。ぼんやりしていればすぐに死ぬ)