第1章 愛しい君は半透明人間
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それからまた、幾年もの月日が経った。
人類の長年の悲願が叶い、巨人は一匹残らず殲滅された。
ウォール・マリアの壁の一部には大きな穴が開けられ、その大きな穴からは壁外の景色を見渡すことができた。
長年狭い世界に閉じ込められてきた人類の解放を象徴するような光景だった。
リヴァイとは、その穴が目の前に一望できる場所に小さな家を構えた。調査兵団本部からはやや離れているが、馬を使えば大したことはない距離だ。
「よ、あれからもう何年経った?」
「何年でしょう…もう随分経ちました」
「巨人共も、もうすっかりくたばっちまったぞ」
「…信じられません、まさか本当にこんな世界が来るなんて」
人類は巨人達との戦いに勝利した。今はもう何の恐れもなく、壁外へと行くことができる。
もはや壁内、壁外といった概念すらなくなりつつあるのだ。
ここまでたどり着くのに、本当に多くの仲間を失ってしまった。も、厳密にはこの中に入るのかもしれない。
だがリヴァイ達は、死んでいった者たちに報いるため人類の自由な明日を手に入れるため、必死で戦った。
そんな日々を何年も何年も、リヴァイとは共に過ごしてきた。
リヴァイはもともと小柄で童顔であり実際の年齢よりも若々しい容姿をしていたが、年齢と共に徐々に老いていった。
だがは、当然と言えばそうだが、いつまでもその姿は変わらなかった。
いつまでも、亡くなった時の年齢のまま、年老いていくリヴァイの隣で微笑んでいた。