第1章 愛しい君は半透明人間
「わたし…っ、死んじゃってます…っ」
「あぁ、知っている」
「普通の夫婦には…なれませんっ」
「一緒にいられれば、俺はそれでいい」
「子どもも産めませんっ」
「お前がいれば十分だ」
「わがままですよ…っ?」
「お前のわがままなら、いくらでも聞いてやる」
「気まぐれで、勝手です…っ」
「俺は猫派だから、気にしない」
は泣いていた。子どものように、しゃくりを上げながら。
ポツポツと発せられる言葉に、リヴァイは一つ一つなだめるように答えてやる。
「……いつか消えちゃうかも…っ」
「それは許さねぇ。消えるなら俺も連れて行け」
リヴァイは急に真剣な顔になって、まるで言い聞かせるように言った。
「お前と一緒にいたいんだ。お前をどこにもやりたくねぇ。昼も夜も、壁内でも壁外でも、生きてても死んでても、お前が隣にいなくちゃ俺は嫌なんだ」
いつの間にか、リヴァイの頬にも涙が伝っていた。
「だから、俺の側にいろ」
次の瞬間、フッとリヴァイの視界は暗くなる。が覆いかぶさるようにして抱きついてきたからだ。
「はい…っ、兵長ぉ…っ」
その華奢な身体を抱きしめ返してから、リヴァイはまるで掲げるようにしてを抱き上げると、くるくると回り始めた。
その弾みで、二人の目から流れ落ちていた涙は吹き飛んでしまう。
「それとな、兵長ってのはもうやめろ。名前で呼べ」
リヴァイは笑った。
普段しかめている顔を最大限に緩めて、人生で一度もしたことがないほどの笑顔を浮かべた。
それを見たは一瞬呆気にとられた後、声をあげて笑ったのだった。
「はい!リヴァイさんっ」
お揃いの銀の指輪をつけて帰った二人が、ハンジ達から祝福を受けたのは言うまでもない。