第1章 愛しい君は半透明人間
〇
の誕生日当日がやってきた。
この日のためにリヴァイは休みを申請していて、気合いも十分だ。
どこからか話を聞きつけたハンジが、のために外出用の洋服を持って押しかけてきた。
着替える間は出ていろと言われ、渋々部屋の外で待っていたリヴァイだったが、しばらくすると勢いよく部屋の扉が開かれて、にゅっとハンジが顔を出した。
「お待たせ!」
室内に入ると、そこには淡いピンク色のワンピースを着て恥ずかしそうに笑うの姿があった。
「…あの、変じゃないですか…?」
おずおずと問われ、リヴァイは自身が一瞬言葉を失ってしまっていたことに気が付く。
「よく似合っている」
リヴァイの言葉使いは、いつも以上にぶっきらぼうだ。そのままくるりと背を向けてしまうが、
「…行くぞ」
僅かに振り返り、駆け寄ってきたの手を優しく取った。その仕草には、普段以上に優しさが溢れていたのだった。
「プクク…。行ってらっしゃーい!楽しんできてね!」
長年の付き合いで、リヴァイが照れていることなどお見通しのハンジは、必死で笑いをこらえた。
この不器用な友人の、純粋すぎるほどの愛情表現は見ていて退屈しない。
が死んでしまったことはとても残念だが、形はどうあれこうしてまた一緒に過ごせているのだから良しとしようではないか。
そんなことを考えながら、ハンジは二人を送り出したのだった。