第1章 愛しい君は半透明人間
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の姿を認識する力には個人差があり、そしてそれは徐々に向上していくようであった。
最初は全くの存在を感じ取れなかったエルヴィンであったが、しばらくするとハンジ同様に声を聞くことも出来るようになっていった。
ミケにも同様の検証をしたので、確証の持てる考えだと言える。の姿を目に映せるようになるのも、時間の問題と思われた。
ハンジの仕事を手伝うようになったは、リヴァイの執務室に書類を持ってきて処理をするようにしている。
研究室でそのまま仕事をしてしまうと、周囲の者たちにはペンが勝手に動いているように見えてしまうからだ。
相変わらず他の者には、の姿を認識する兆候は一切見られない。
カリカリとよどみなくペンを動かすの手元を見ながら、リヴァイはあることを口にした。
「もうすぐお前の誕生日だな」
すでに命を終えているに、誕生日というのもおかしな話だと思うが、目の前にいるは到底幽霊とは思えないほどの存在感を放っている。
もはや生きている人間と言っても過言ではないとリヴァイは思っていた。
「どこか出かけよう。どこでも好きなところに連れて行ってやる」
「本当ですか?!」
宝石のように目を輝かせるに、リヴァイは思わず唇の端を上げる。
「あぁ、行きたいところ考えとけ」
やったぁ、どこにしようかな、と無邪気に喜ぶを見ていると、リヴァイの心は温かく満たされるのだった。