第1章 愛しい君は半透明人間
「分かる!分かるぞ!手に温かいものが触れているのを感じる!!、君なんだな?!」
空色の大きな瞳を輝かせてエルヴィンが言う。見開かれた両目から、その喜びは十分すぎるほど伝わってきたのだが、
「てめぇ、なんってツラしてやがる」
その笑顔は狂気じみていて、ちょっと…いやかなり怖かった。
「が怖がってるだろうが。さっさと元の顔に戻せ」
エルヴィンが笑顔を浮かべた瞬間を間近で見てしまったサキは、まるで幼子のようにリヴァイのもとへと駆け戻っていたのだった。
リヴァイの陰に隠れて恐る恐るエルヴィンを見ているを見て、リヴァイがエルヴィンを叱る。
悪気が無いのは分かっているが、を怖がらせるものは何人たりとも許さない。
「はは、すまない。嬉しさのあまり、つい」
苦笑してエルヴィンは頬を掻く。それから、エルヴィンはもう一度手を差し出した。
「、もうさっきみたいな顔はしないよ。だから、もう一度私の手を握ってくれないか?」
「団長…」
すっかりいつも通りの表情に戻ったエルヴィンに、はまだおっかなびっくりであったが歩み寄っていくと、両手でエルヴィンの手を包み込むようにして握った。
「…、ようやく君を感じることができたよ。おかえり、よく帰ってきてくれたね」
の小さな手に重ねられたエルヴィンの大きな手。
伝えられた言葉に、の心には、やっとエルヴィンにも分かってもらえた喜びや、死んでしまった無念などがいっぺんに押し寄せてきて、しゃくりを上げて泣き出してしまったのだった。