第1章 愛しい君は半透明人間
そんなある日、執務室兼自室で事務仕事をしていたリヴァイにが言った。
「兵長、私に何か仕事をください。このままでは退屈しすぎて成仏してしまいそうです」
今のには仕事も無いし、訓練をする必要も無いので、暇を持て余しているのだ。
七不思議が発生しても困るので、一人で散歩に行くこともできない。何より、側を離れることをリヴァイが許さない。
だらりとリヴァイのベッドに寝転んでいるを見て、リヴァイはフッと小さく笑った。
生前のは自分の前でここまで気の抜けた態度は取らなかったと思うが、壁外から連れて帰ってきて以降は片時も離れずにずっと一緒にいたため、随分と油断してきた様子が伺える。
死んでもなお、との距離を縮められたことが嬉しかった。
「掃除は」
「このお部屋は隅々まで片付けました」
「書類の整理は」
「すでに終わっています。机の上に置いてあるそれが、そうですよ」
「衣類の整理をしてくれ」
「終わっています」
「…じゃあお前に頼めることはもう何もないな」
「そんなぁ~…」
ガックリと肩を落とすに、そんな姿も可愛いと思わず唇の端が上がってしまいそうになるリヴァイだったが、あまりにも落ち込んでいるのでさすがに可哀想になってきた。
だがそうかと言って、この部屋から出て何かをさせる訳にはいかない。
そんなことをすれば、たちまち兵士たちの間で幽霊の噂が駆け巡るだろう。何のために七不思議阻止のために苦労したのか分からなくなる。
「…じゃあ、アイツのとこにでも行くか」
「ハンジさんのところですね!」
細かいことまで言わなくても、察しの良いはぱっと表情を明るくしてベッドから飛び降りた。
「よく分かったな」
得意げに笑うの後に続いて、リヴァイも椅子から腰を上げた。
は生前、ちょくちょくハンジの研究を手伝わされていたなと思い出したから、とりあえず行ってみようと思ったのだった。