第1章 愛しい君は半透明人間
ミケは、”がいる”と言われたリヴァイの傍らをまじまじと見つめる。
だがいくら目を凝らそうとも、そこには何も見えない。
それでも確かに、自分の鼻はの香りを感じているのだった。
次の瞬間、フワッと香りの流れが変わった。
「ミケ、今、お前の目の前にがいる。ミケさん、と何度も声をかけているぞ」
「…っ!!本当に…、本当にここにいるのか?」
ミケは思わず手を伸ばした。
差し出されたその大きな手を、は小さな両手でそっと包み込む。
「?」
柔らかい風に吹かれているような微かな感触、だが確かに、ミケはその手に温かさを感じた。
「、ここにいるんだな…?」
ミケは、鼻の奥にツンと痛みがこみ上げてきて、気付いた時には涙が両頬を伝っていた。
リヴァイは無闇に嘘をつく人間ではないから、彼がそう言うからには本当なのだろう。
まさに今、手に感じている温もりと、自分の鼻がとらえた香りが何よりの証拠だ。
「ごめんなさい、と泣いている」
の姿が見えないミケのため、リヴァイが教えてやる。
その言葉に、ミケの脳裏には子どものように泣いているの姿が思い浮かんだ。
「…!!何を謝る…お前は勇敢に戦った。俺たちの誇りだ。だから、もう泣かなくていい」
ミケはの背丈を思い出して、おそらく頭があるであろう辺りを撫でる仕草をした。
だが、微妙に位置がずれていたらしく、そこには頭ではなく頬があった。
「おいミケ…もういい」
若干嫉妬したような表情のリヴァイが、ぐいっ、と何かを引っ張るような仕草をする。
それと同時にミケの手に触れていた温もりも消えていったので、が側から離れていったことが分かった。
「お前がそんな顔をするんだ。信じるよ」
眉間にシワを寄せたリヴァイの顔を見て、ミケは小さく笑ったのだった。