第1章 愛しい君は半透明人間
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壁内に帰ってきたばかりの頃は、の身体は半透明に透き通っており、フワフワと羽のように浮かんでいた。
自身の周辺を飛び回っている姿を見て、まるで天使のようだと思ったことは、リヴァイは黙っていた。
言ったらは照れてどこかに隠れてしまいそうな気がしたからだ。
昔からは照れ屋で、ちょっと褒めるとすぐに顔を赤くする。
それが面白くて褒めちぎったことがあったが、あの時は恥ずかしさのあまり、しばらくリヴァイの前から姿を消したほどだった。
あまりにも完璧に気配を消すものだから、さすがのリヴァイも焦って、血眼になっての事を探したものだ。それほど、は筋金入りの照れ屋なのだ。
今のの姿は半透明で儚げだから、あの時と同じように姿を隠されたりなどしたら、それこそ消えてしまったのではないかと不安で気が気でなくなる。だから言わない。
だが、日を追うごとに半透明だったの身体は輪郭を明確にしていき、今ではまるで実体があるかのようにはっきりと見えるようになった。
それに伴って、の身体は宙を浮かなくなり、生身の人間のように両足で歩くようになったのだった。
「よ、俺の目には本当にはっきりとお前の姿が見えている。こうやって隣を歩かれると、お前が生きているんじゃないかと錯覚してしまうほどに」
ある日リヴァイは、傍らを歩くの姿をまじまじと見つめて言った。