第2章 人間関係
彼女と彼の共闘5 side凍季也
「どれくらいまで捌ける?」
「このくらいなら余裕。」
凍季也は集まって何事かを話し合う男達を一瞥すると何を、とは言わず凍叶にそう問いかけた。凍叶も普通なら何を聞いているのかわからないであろうその問いに至極端的に答えを返す。
凍季也は凍叶が実践で使えるような___人を殺せる類の剣術をやっていることも、それに、自分も同じく『人を殺せる剣』を扱う人間であることを凍叶がわかっていることにも気がついていた。蛇の道は蛇、或いは同じ穴のムジナとでも言うべきか。手のひらについた剣だこ、駆け足の柔らかさ、地に足を擦るような歩き方などからこの二人に限らずやはり同属は判るものなのだ。だから凍季也はあれ程大胆にチンピラに喧嘩を売ったし、凍叶もそれを止めなかった。
「テメェら、ウチの可愛い後輩を苛めてくれたんだってなぁ、そんな女男の分際で。ははっ、喧嘩なんかしたらその綺麗な面が汚れちまうぜ?今土下座して謝れば許してやるからさっさと詫び入れろや。」
凍季也はチンピラのリーダーと見られる男のその言葉をナチュラルに無視して懐から水の入ったペットボトルを取り出し、中の水を彼の愛刀である閻水に掛けて水の刃を作った。凍叶はその様子を見て可笑しくて仕方ないというように笑っている。そして二人は何方からともなく背中をあわせた。
「…その態度は喧嘩売ってるってことでいーんだな。」
リーダーの男の言葉と共に男達はジリジリと二人を囲み、その輪を縮める。___これでやっとやつの剣を見られる。凍季也は背中あわせの彼女と酷似した笑みを浮かべた。