第2章 人間関係
彼女と彼の共闘4 side凍叶
「暇そうだな。」
口火を切ったのは凍季也だった。軽蔑したような低い声には僅かに苛立ちの色が含まれていたものの、この夜の気配の様に凪いでいる。その凍季也の声を聞いて、チンピラはあからさまに舌打ちをした。
「ちっ、カワイーねーちゃん二人連れかと思ったのに片方男かよ…。ったく、おいそっちのねーちゃん、そんな女男やめてオレにしねぇ?」
「あはははっ。」
凍叶はチンピラの誘いには答えず、微量の憐憫と軽蔑を込めて嗤った。
「随分な態度だな。人を女と間違った上謝りもせず無視か。何様のつもりだ?盛りのついた畜生が。」
凍季也はどうやら女に間違われたことが相当頭にきているらしい。凍叶はそれを聞いてまた派手に喧嘩を売ったなぁと思った。
「ああ!?んだよテメェ黙って聞いてりゃしゃあしゃあと!そんなにこの女をオレに取られたのがそんなに悔しいのかよ!」
「何か色々と勘違いしているようだから一応言っておく。僕とそいつはただの隣人で今日の昼が初対面だ。」
「返事してないのに何故か私がついていくこと前提なのには突っ込まないんだ?」
「どうでもいい。」
「第一盛りのついた畜生ってどういうことだよ!人に向かって失礼だと思わないのか!?」
「あっははは、まぁ先輩らしいっちゃらしいかな。」
「オイ、聞いてんのかよ!?」
「僕らしいとはどういうことだ。お前とは今日が初対面だろうが。」
「ん〜、なんとなくそういう人かなって。」
「オイ!テメェら!」
「まるで見透かしたようなことを言うんだな。」
「まあね、そういうのは得意なの。」
「シカトしてんじゃねーよ!」
そこで二人は初めてチンピラの方を振り返り、まだいたのか、という顔をした。
「煩いな、まだいたのか?」
「テメェら、揃いも揃ってオレを馬鹿にしやがってっ…!」
と、堪え性のないチンピラが凍季也に向かって怒鳴ると、それを聞きつけたらしい男達が駆けつけて彼に話しかけた。
「おいアスカ、大声出すなうぜえ。」
「センパイ、あの女男がっ…!」
「あ?どうした?」
まるで円陣を組むように男達は集まり相談を始める。
凍叶はとうとう凍季也の手腕を見られると、密かに歓喜に震えた。