第2章 人間関係
彼女と彼の共闘3 side凍叶
アパートの部屋を出発してから三十分後。凍叶と凍季也はいかにも頭の軽そうな男達に絡まれていた。
「ねぇお嬢ちゃん達さ、オレらと遊ばない?」
早い話がチンピラのナンパである。と、ここまで考えて凍叶は首を傾げた。普通深夜に親しげに会話をしながらコンビニに向かう男女をナンパするだろうか。答えは十中八九否だろう。実際凍叶は純粋に凍季也に彼女の好む夜の街を見せてやりたいという思いや隣に越してきた新しい玩具を観察したいという思惑とは別に彼にチンピラ避けとしての効果も期待していたのだが(因みにそれらの意図の比は1:8:1くらいだった)、チンピラに二人の男女の逢瀬を邪魔しようという意思は感じられなかった。更にチンピラは声をかける時何やら複数形で呼びかけていた気がする。これらから察するに。
凍季也は女に間違われているようだった。
「…。」
どうやら凍叶がそれに気がつくのと同時に当の本人である凍季也も凍叶と同じ結論に達したようで、端正な顔を歪ませていた。腰のあたりまで髪を伸ばしている癖に女に間違われるのは嫌らしい。
「お手並み拝見といこうかな。」
深夜の薄暗がりに独り言ちる。凍叶はできることなら凍季也を指で指して笑ってやりたい気分だった。