第2章 人間関係
彼女と彼の共闘2 side凍季也
凍季也はアパートの部屋の前でドアに寄りかかり、先程着替えてくると自分の部屋に引っ込んだ彼女が出てくるのを待ちながら彼女の名前は何と言うのだろうとぼんやり考えていた。部屋のドアにかけられた表札は黒地に白抜きの文字で"夜桜"と書かれているが、書かれていない下の名前は分からない。さすがに何時迄もお前と呼んでいるわけにもいかないし、なら苗字で呼べばいいだろうと思うかもしれないが本人から名乗られていない為そう呼んで良いのか悩むところだ。ひょっとしたら偽名、あるいは親戚の苗字かもしれない。
と、丁度そんなことを考えるのにも飽きてもういいや、本人に聞こうと凍季也が投げやりに思考を放棄したタイミングでガチャリとドアが開き、当の彼女が顔を出した。
「準備終わったよ。」
「そういえばお前名前何て言うんだ?」
「夜桜 凍叶」
普通に名乗った。一回目に聞いたとき素直に言わなかったのはただの気まぐれのようだ。ついでに言うと表札の苗字は本名だった。
「そうか。」
凍季也が愛想のない返事を返すが、凍叶は大して気にした様子もなく、それはそうと、と小首を傾げ凍季也を見上げる。
「可愛い?」
先程のリラックマなパジャマとはうって変わった白のTシャツと黒のパーカー、グレーのロングスカートの自称天使。中身がマイペースな小悪魔だと分かっていても心が揺れる程度には可愛いかった。