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闇濡月

第2章 人間関係


彼女と彼の馴れ初め2 side凍季也

凍季也はそのままアパートに入ると迷いない足取りでエレベーターのある方へ進んだ。こんな天気の日である、雨晒しの階段は恐ろしくよく滑ることだろう。案の定、エレベーターは一階に止まっていて、その中には先程の彼女が入って左側の壁に寄りかかって目を閉じていた。凍季也が乗り込み数秒でエレベーターのドアが閉まる。それと同時に壁に寄りかかっていた彼女はすっと目を開け、凍季也に話しかけた。
「貴方、誰?見かけない人。」
その問い方からして彼女はここの住人なのだろう。そうあたりをつけた凍季也は彼女を冷静に観察しつつ応えを返す。
「…水鏡凍季也だ。最近このアパートに引っ越してきた。」
よく見ると目の前の彼女は不思議な容姿をしていた。灰色の髪はショートというには長くロングというには短い中途半端な長さで、少し長めの前髪の下の双眸は角度によって色の濃さが変化する。やや碧のかかった銀の長髪に水色の瞳の凍季也の言えたことではないが、彼女の容姿がかなり奇抜であることは否定しようがない。
「お前は。」
凍季也は名前を聞いてきたきり名乗る様子もなくだんまりを決め込んでいる彼女にこちらは名乗ったのだから問い返しても失礼には当たらないだろうと問いかけた。すると彼女はついと唇の両端をあげ、彼を見上げて微笑んだ。
「天使」
名乗るつもりがないのか、それとも凍季也を揶揄っているのか。どちらにしろ彼女のその微笑みは。
「天使と言うには邪すぎるんじゃないか」
彼女は違いない、と笑った。

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