第7章 星に願いを。(テーマ:星)
夜の戸外と言えど、夏は暑い。
風呂上りの10時ちょっと前。
半袖半ズボンで棒付きアイスを片手に家の屋根に座り込む。
「おーい、なぁにしてんの?」
空を見上げていると、そんな間抜けな声が聞こえた。
隣の家の窓から声をかけてくるこいつは、菊丸英二。私の幼馴染だ。
「…別に。」
小学生の頃は仲が良かったけど、中学生に入ってからは…そういうお年頃なのかな。
学校以外で会わなくもなったし、話をすることもなくなった。
今みたいに、そっけなく見せることだって多い。
「…そっち、いってもいい?」
「好きにすれば?」
相変わらずの笑顔で問いかける英二。私の答えを聞くと窓から顔を引っ込めてどたどたと音がした。
私の家の屋根なんだから、当然私の家を通ってくる。
…なんて常識はないらしい。
ちらっと窓の方を見ると、片手にアイスをもって窓から体を乗り出す英二。
「よっ!!」
「ちょっ、英二っ!!!!」
ふと窓から英二が消えた。
そんな。隣の家まで飛び移るなんて無謀な話で。
立ち上がって駆け寄るけど、下には英二の姿が見当たらなかった。
とんとん、と肩をたたかれ後ろを見ると、能天気にわらっているアイツ。
「心配してくれた??」
「…べ、別に…。」
私の家と英二の家は、特に遠いわけでもないのを忘れていた。
一部、お互いの家の屋根の距離がほとんどないに等しいくらい近いところがある。
そこから飛び乗ってきたらしい。
ほっとして涙が出そうになるけど、顔をそらして元の位置に座り込んだ。