第9章 2018年 誕生日おめでとう。
いつもは遅くなってしまうため練習を待たずに友達と帰るが、28日の今日は練習を見て待っていた。
ただ、ちょっと不安なことがある。
月曜日から、ほとんど話せていないこと。
なんだか、避けられている気がした。
会話をしても一言二言交わしてすぐに別の人と話に行ってしまってそっけなかった。
「英二、一緒に帰ろう…?」
「べつにいいよん。」
不安に思いつつも声をかけると、OKはしてくれた。
けれど、道中会話はない。
途中、立ち止まる英二。
「…英二?」
「は不二が好きなの…?」
「え?」
「この間、不二と二人っきりで出かけてるとこ見ちゃったんだかんね…!しかも、なんか渡してたじゃん。」
「あっ…、」
“こんなところ見られたら英二に怒られちゃうかもね”
その不二くんの言葉が、現実のものとなっていたらしい。
うつむいて口を尖らす英二がなんだか愛おしくなった。
嫉妬して、どう接していいのかわからなかったんだ…。
ふっとほほ笑むと、私は触れるだけのキスをした。
「ごめんね?」
「っ…、ずるいずるいずるい!!そんなことしたって許してやんない!!」
ちょっとほほを赤く染めてふいっと顔をそむける英二に、私はぎゅっと抱き着いていった。
「Happy Birthday、英二。」
「むー…っ」
その表情は見えないけれど、ぎゅっと抱きしめ返してくれる英二に、あの時のことの経緯を話した。
「えー!?そうだったの!?早くいってくれればいいのにー!」
「だって、誕生日前に言えないじゃない。それに、英二私のこと避けてたし!」
「うっ…ごめんね?」
本当に、こういう時の英二はずるい。
猫耳としっぽが垂れ下がっているような、そんなにゃんこ的可愛さに私はひかれちゃったんだ。
そして、ふと見せる男らしさとか、テニスをしているときの生き生きしたところとか、すーぐ怒るところとか、そういうところひっくるめて全部、全部大好きなんだ。
「英二、大好きだよ。」
「うんにゃっ!俺も。」
英二の笑顔を確認して、私はプレゼントを渡した。
「ありがとねん!」
私は思う、この笑顔を、いろいろな英二の表情を、ずっと守ってあげたいと。
英二、誕生日おめでとう!!