第6章 ぽろり。(テーマ:プール)
「持ってきたよ。」
優しく私を抱きしめていた腕は、一瞬だけ力が籠められた。
片腕を不二先輩に伸ばしてタオルを受け取ると、私にそっとかけてくれた。
「あーあ、残念無念、また来週―ってねん。」
そういうと、その場を離れて行った。
その背中が、なんだか寂しそうに見えて、目が離せなかった。
「ちゃん、更衣室で水着直したらまたおいで。」
「はい。」
不二先輩に声を掛けられ、私はやっと体を動かした。
水着を直して更衣室をでると、壁に背を預けて立つ菊丸先輩がいた。
「先輩、さっきはありがとうございました。」
「…俺、さっき離したくなかった…。」
うつむいたまま紡がれる言葉に静かに耳を傾ける。
「ほんとは!ちゃんの肌をほかの奴に見せることも嫌なんだけど…、なんか、俺どうしたらいいかわかんないにゃ…。」
言葉を言い終えると、するするとしゃがみ込む菊丸先輩。
「私、助けてくれたのが…、抱きしめてくれたのが菊丸先輩で、なんだか嬉しかったです。私も、この気持ちがなんなのか、わからないんですけど…。」
「うあーっ!!悩んでたってしょうがないじゃんか!俺、ずーっとちゃんと一緒にいたい。」
座り込んで落ち込んだかと思うと、急に立ち上がってにかっと笑顔を見せる菊丸先輩。
なんだかよくわからないけど、心がぽかぽかあったかくなる。
「ありがとうございます!私も、先輩とずっと一緒にいたいですよ!さ、遊びに行きましょ!」
そして、私たちは手をつないで再度プールへと向かって行った。
帰りのバスの中でちょっと思ったんだけど、
これって、お互いに好きってことなんじゃないかな…?
気持ちわからないとかなんとか言っといてなんだけど、ずっと一緒にいたいって気持ちは、本物ですよ!
おわり
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