第14章 ランスロットー執着とキスー
暫く俯いたアリスだったが体に感じる暖かさに気付きハッとする。そしてランスロットから離れようとその胸を軽く押し返す。
「…ぁの、とりあえず、離してもらっても…」
「なぜだ?」
「…なぜって…あの、くっついてる意味はないというか…」
「だめだ。」
「…へ…?なんで、でしょう…?」
「逃げるかもしれない。」
「…逃げる?誰がですか?」
「貴様だ。いなくなるかもしれない。」
「そんなことは、しないと…思うんですけど…多分…」
「だめだ。どんだけ待ってたと思ってる。」
「…え?」
「貴様は何も覚えてないみたいだがな。」
「…ぁの…なんの話で?」
「いい。とにかくこのままだ。暫く。」
「…ちょっ、本気ですか?こんなくっついてなくても、ね?隣にいますから。ほら、ゆっくりその手を離して、ね?お兄さん」
「……」
無視。
「お兄さんー?ねぇ?聞いてます?お兄さん?」
「……」
無視
アリスが胸を押す力を緩める。諦めた様子だ。
「…離してほしいのか?」
「…え?…それは、まぁ、そうですけど…」
「嫌なのか?」
「嫌っていうか…むしろ…なんで、なの?というか…」
「嫌じゃないんだな?」
「…そもそもそう言うところまでたどり着いてないっていうのが正解というか…」
「離してやってもいい。」
「え?ホントに?!」
ランスロットの言葉にアリスが顔を上げる
「だが、ひとつ条件がある。」
「…条件?…なんでしょうか…?」
ランスロットがルールの紙に触れると一枚の新しい紙が現れた
「この紙にサインしろ。」
「これは、なんでしょうか…?」
アリスはよくわからず問いかける
「結びの証だ。」
結びの証。聞いたことがある。アリスは昔聞いた祖父の言葉を懸命に思い出そうとする。
「…それって、確か…」
「あぁ。幼い頃聞かされていたか。この紙にサインすれば貴様がいついなくなっても連れ戻しに行ける。」
「…いや、でも…それって…」
アリスの記憶から祖父の言葉が完全に思い出される
「…好き同士になったら、サインする、やつ、ですよね…?」
好き同士。お爺ちゃんのセリフが口から出てくる
「…そうだな。正式には心が通じ合って恋人になったら、とでも言うのか。」
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