第11章 シリウスー大人と賭けと負けとー未完成
次の日ソファで寛いでいる時にそれは訪れた。昼食が終わってボーッとしているとガチャと音を立ててシリウスが入ってくる。
「よ、嬢ちゃん」
「…」
「なんだよ、挨拶もなしか」
「…こんにちは…」
シリウスは何の躊躇もなくアリスの隣へ腰を下ろす。
「それじゃあ本題だ。ソファに座ったままキスされろ。…そうだな、時間は…五分ってとこか」
「…」
きた、と思った。でも命令を淡々と告げられアリスは無言のまま頷く。賭けに負けたんだ。抵抗はできない。
「随分しおらしいな、逆に調子が狂う」
「…賭けに負けたのは事実だから」
「そうか。聞き分けがいいな。さすが大人だ」
「っ、」
頬っぺたをひっぱたいてやりたい。泣き叫んで殴ったやりたい。でもそんな駄々を捏ねることはアリスにはできなかった。ゆっくりシリウスの唇が近づく
「…ん…」
優しい…?
シリウスのキスは柔らくとても丁寧で脳みそが追いつかないなんてことにならなかった。どうして…?
「っ、はぁ」
息継ぎのタイミングもしっかりとくれる。強引じゃないそのキスにアリスは逆に戸惑ってしまう。
「っ、ぁっ、」
最後優しく舌を吸われ唇が離れた。
「…よし、じゃあ書類片付けてくる」
シリウスはスッと立ち上がった。
「…」
「またな。」
大きな手が頭の上に置かれポンポンと何度か撫でるとシリウスはそのまま部屋を出て行ってしまった。調子が狂うのはこっちのほうだ!アリスはどこまでも余裕なシリウスに大きく息を吐いた。
その日の夜
「風呂はいったか?」
「…うん、さっき」
まだ体がポカポカ暖かい。そんな中シリウスに再び命令された。
「寝る前だからな。10分。このままキスさせろ」
「…」
そうやって事あるごとにキスの命令はくだる。それは1日に数回、でも決して強引ではない優しいキスだ。アリスの中であの時された60分のキスの記憶が薄れていくほどに日々のキスで上書きされていく。
甘いー甘い
それが、こわいーー
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