第11章 シリウスー大人と賭けと負けとー未完成
アリスは賭けに負けた。
「…忘れてないよな?賭けの話」
くったりと力なく座り込むアリスにシリウスが告げる。60分のキスの間一度でも達したらシリウスの勝ちという賭けだった。実際はやり直しになったとはいえ何度も何度も数え切れないほどイカされた。言い逃れはできない。
「賭けは俺の勝ちだ。約束通り何でも一つ命令していいよな」
「…」
アリスがギュッと目を閉じる。どんな命令がくるのか想像もつかない。
「…これから一カ月の間俺がしたい時にいつでもキスさせろ。長さも体制も俺が支持した通り、いいな?」
「…は?」
働かない頭でも理解はできた。でもーー
「一カ月も…?」
「当たり前だ。交換の約束は一カ月だからな」
賭けは賭けだ。アリスは先程見せつけられた力の差に言い返す気力もなかった。ただうなだれる。
「もう今日は疲れただろ?ゆっくり休むといい」
だれのせいで!と叫び出したい気持ちはやまやまだが大きな手に頭を撫でられその気持ちがしゅんっと落ち着いていく。ームカつく
言い表せない感情に蓋をしてアリスはゆっくり立ち上がった。これが一カ月続くと思うとどうしようもない不安が胸を襲う。ただただ今は寝たい。
目覚めたらーー夢だったらいいのに。
そう願って。
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