第10章 シリウスー大人と悪魔とキスとー
キスをはじめてすぐシリウスが口を開いた。
「…これは賭けだ。口を開かないなんて狡い真似、嬢ちゃんはしないよな?」
「っ、」
試されてるようでイライラする。アリスはシリウスの言葉にカッとなって頷いた。
「…なめないでよ。どんなキスだって別に大したことない」
「だよな。じゃあ俺が好き勝手暴れても問題ないな。」
「好き勝手ってっ」
「これは賭けだろ?こっちも命令される可能性があるからな。手加減はできない。」
「…あたりまえでしょ。」
この男は本当にキスでイクなんて夢を見ているのかと呆れてしまう。好き勝手されるのは好ましくないがこの喰えない男にひと泡ふかせるチャンスかもしれない。アリスはそう思ってゆっくり唇を開いた。
「っんーー」
別に大したことないーー
「っはぁ、っ」
最初は本当にただのキスで。過去の記憶の中にある行為たちと何も変わらなかった。
なのにーー
「っ、ちょっ、…っ、」
30分を過ぎた辺りでシリウスのキスが変わる。何が変わったのかよくわからないが明らかに何かがさっきまでと違って思わず目を見開いた。
「…どうした?」
「…なんでも、ない」
問いかけてきた顔が確信犯だとわかり本音を胸にしまう。
「…続けるぞ。あと30分しかないからな。」
そこからシリウスのキスはどんどんエスカレートしていって最初の30分はまるで遊んでいたのかと思うほど好き勝手に暴れていた。
「っん、んーっ、は、っ、」
やばいーー
背中をゾクゾクと何かが登っていく。首あたりまで登るともう一度下から何度も何度も。こんな感覚に陥ったのは生まれて初めてかもしれない。アリスは自分の身体に起こっている現象が理解できずそれでも続けられるキスにだんだんと冷静さを失っていくのがわかり恐怖していた。ーあと20分。
「っん、ん、んっ」
このままじゃ本当にーー
ふいに脳みそをよぎったイク、という言葉。それだけは絶対に避けたい。アリスは鼻で呼吸をするのをやめてグッと身体に力をいれる。シリウスがくれる息継ぎのタイミングの時だけ酸素を取り入れまたキスがはじまればその最中には呼吸を止めて耐える。意識の殆どを快感から逃げることに集中させ必死に時間の経過を待った。
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