第10章 シリウスー大人と悪魔とキスとー
乗り越えたと思ったアリスをそこから何度も課題が襲った。
30分間のキス
45分間のキス
強がりなアリスはそれを平然を装って耐えていた。実際男を信じていないのも他の女の子達と自分は違うと思っているのも嘘じゃない。交換の約束を心から待ち望んで信じていた時期もあった。けれど実際に起こるには自分は歳をとり過ぎたと思う。待っていたのにこなかったー辛い時期に裏切られた感覚だ。人生経験をそれなりに積んでしまっている自分がアリスなんて自分で自分を笑ってしまいそうになる。
「っはぁ…」
「息が上がっているな。苦しいか?」
「…別に。」
心底可愛くない。舌を絡めていなくてもこれだけ長い時間キスをしていれば呼吸も上がる。でもそれは口が裂けても言えない。弱みを見せたら痛い目にあう。アリスは学んでしまった後だった。何もかもが遅い。
"60分間のキス"
しばらくすると再び紙が光った。正直まだあるのかと叫びそうになる。でも表には出さない。癖だ。
「…一つ賭けをしようか。」
キスに覚悟を決めたアリスにシリウスを呟く。
「…賭け?」
「そうだ。これだけ単調なキスだと飽きるだろ。嬢ちゃんは大人だからな。…これからする60分のキスで嬢ちゃんが一度もでも達したら俺の勝ち。もし達しなかったら嬢ちゃんの勝ち。」
どうだ?とシリウスが笑う。
「…達するって…イクってこと?」
「そういうことだな」
「は?…キスだけでイクなんて本当にあると思ってるの?」
アリスはシリウスの賭けがどう見ても茶番にしか思えず怪訝そうな顔で問いかける。
「そう思うって事は嬢ちゃんはイクわけないと思ってるってことだろう?じゃあこの賭けは嬢ちゃんに有利だ。悪い話じゃないと思うが」
「もし、私が賭けに勝ったら?」
「…そうだな。嬢ちゃんの言うことを何でも一つ聞いてやる。嬢ちゃんと呼ばれるのが気に食わないならやめろっていう命令でもいいな。その辺りは好きに決めていい。」
「あんたが勝ったら?」
「俺の言うことを一つ聞いてもらう。同じだ。フェアだろ?」
確かにフェアだとは思う。それにこの男の賭けの誘いを断るのがどうしても癪に触る。
「子どもじゃないんだ。賭け事くらいでビビらないよな?」
シリウスの言葉が引き金でアリスは賭けに乗った。
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