第9章 レイー目は強がりよりモノを言うー
「っ、おい」
アリスがギュッと顔を歪めた。だんだんとその目は色を失いはじめまっすぐレイを見つめていたのに今はぼーっと写しているといった方が正しい。目が合っているのに見ていない。レイはそれに気付きハッと思考を取り戻す。
「…どこ、見てんだよ…」
なぁ、とレイがアリスの視線を捕まえようと声をかける。でもアリスはそれを拒むようにただただレイを写すだけ。
「っ、なんで俺の事見ねぇんだよっ」
アリスの身体がビクンッと反応する。レイはそれで声を荒げたことに気付いた
「ぁ…」
慌てて謝ろうとするとアリスが口を開く
「だって…っ、あなたの目、ちゃんと見つめたら、わたし…っ」
もう耐えられない、と言った様子でアリスが顔を背けてしまう。
「っ、なんなんだよ、さっきから!…お前の言ってること訳わかんねぇよっ…俺のこと、嫌なんだろ?話しかけても答えねぇし目も合わせないっ、キスだって…嫌がるしっ」
「っ、」
「…俺がどんだけお前の事待ってたか知らねぇだろっ!ずっと待って待ちわびて、空からお前が落ちてきた時どんだけ嬉しかったかっ」
「…ぇ?…でもっ!」
「っ、いやがってんのはお前の方だろっ、こっちがどんだけ我慢してるのかわかってねぇよっ、喉から手が出るほど欲しかった女とキスしてて舌を入れるなって方が無理だろっ、だいたい、お前可愛すぎるんだよっ始めてちゃんと顔を見たときの俺の衝撃がわかるか?はじめて聞いたお前の声が俺の名前だった時の幸せがお前にわかんのかよっ!」
今度はレイの本音が溢れ出す。息すらしてないほどの勢いで話しかけられアリスは理解するのがやっとだ
「…なに、いって…」
「…お前が、落ちてきた時、震えるほど嬉しかった…待ってたやつがやっときたからだけじゃねぇよ。お前が運命の相手で、俺だけのアリスで本気で幸せだと思ったんだ。…なのに、お前、なんで自分がアリスで落ち込むとか訳わかんねぇこと言うんだよ。ちゃんと説明してくれねぇとわかんねぇよっ」
レイが不貞腐れたように呟く。
アリスは浅い呼吸を繰り返してやっと理解したレイの言葉に顔を赤らめた。
「…うそ、わたし、てっきり…っ」
どんどん顔が赤くなって目に涙が浮かぶ。
next.