第9章 レイー目は強がりよりモノを言うー
アリスは夕食を食べ終わり一人部屋でぼーっとしていた。今日一日食事の時だけレイが現れ料理を運んできてくれていた。会話は殆どなく、これルカが作ってくれた飯ーとか、窓あけるかーとか。頷くか首を振るかで全て成立してしまう。
「はぁ…」
小さくため息をついて上を見上げる。自分で自分が嫌になる。まさか気絶してしまうなんてーー昨日のことを思い出すと恥ずかしくてまた気絶してしまいそうだ。アリスはぎゅっと顔を歪め羞恥に一人で耐えた。
ガチャ
「…飯、食い終わったか?」
「…」
ドアを開けて入ってきたレイに問いかけられアリスは頷いた。ーーとても美味しかったです。伝えたいけど声が出ない。
「そうか。」
「…」
会話が続かない。全部じぶんのせいなのに。
「…あ、のさ、」
「っ…」
レイの声が聞こえる何か改まっているようだが理由がわからない。もしかしたらリタイアの紙の話かもしれないーリタイアの紙はどちらかが交換の約束を続けられないと判断した場合書く紙だ。それは大きなリスクを背負う。でももしかしたら…
「…昨日、…」
レイが何かを言いかける。
でもその時ルールの紙が光った。そしてこの国へ来て2回目の課題が出された。
"見つめあって15分"
このタイミングかよ、とレイが呟く。アリスはその一言で下を向いてしまった。目線の先にレイの靴が見えて近付いて来たことはわかったがどうしていいのかわからない。
「かみ、光ったけど…」
レイが様子を伺うように話しかけてくる。アリスは課題の内容を思い出してハッとした。
ーー見つめあって15分
無理だ。そんなの。目を合わせることも出来ないのに。アリスの心臓がドクドクと音を立てている。もう既に泣きそうだ。
「…むり、です、」
声を絞り出す。
「…俺の目見るの、いやってことか?」
「…」
ちがうーー
「そうだよな。昨日嫌いって言ってたもんな。」
レイが諦めたように息を吐く。
ちがうーー
「…でも、課題クリアしないと罰がある。それに罰を受けないんだったら戦争になる。」
「…っ」
「悪いけど、やってもらわねぇ困るんだよ。」
レイがアリスの頬を両手で掴んだ。そしてゆっくり上を向いて向かせる。
next.