第14章 ランスロットー執着とキスー
アリスが眉間にシワを寄せる。
「嘘ではない。…すみれ…」
「…っ、?…な、まえ…」
まだ告げてないはずの自分の名前。それを呼ばれアリスが驚く。
「だから嘘ではないと言っただろう。幼い頃俺は我慢できず貴様に何度か会いに行った。満月の夜だ。」
「…満月の、夜…」
「そうだ。子どもだったからな。内密にしていたのにあっさりとバレて貴様に会いに行くのは禁止されてしまったが。」
「……」
「忘れているならそれでもいい。だが貴様が俺の運命の相手だというのは紛れもない事実だ。それは変わる事はない」
アリスは何故か子どもの頃にみたリアルな夢を思い出していた。満月の夜数回だけ見た鮮明な夢
「…ランス、ロット…?」
思わず口に出してしまった。あの時夢に出てきた少年の名前を。
「…なんだ。」
「…え?」
「今俺の名を呼んだだろう」
「…っ、まさか…」
言いかけて口籠る
「貴様忘れているのに何故俺の名前を呼んだ」
ランスロットが怪訝そうな顔で問いかける
「…お兄さんが…ランスロット…?」
「そうだ。」
「ほんとに…?本当にお兄さんの名前はランスロットっていうの?…あの…ランスロット?あの、可愛くてよく笑って…待ってるって抱きしめてくれた…不思議の国の王子様の?」
「っ、昔の話はやめろ。だが貴様の言っているランスロットは俺で間違いない。思い出したのか。」
「…思い出した…っていうか、あれって、夢じゃなかったんだ…」
「愚問だな。あの時も今も夢などではない。現実だ。」
アリスはしばらくの間ボーっと思い出に浸っていた。しかし再び光ったルールの紙がアリスを現実へ引き戻す。
「貴様が口付けをやめるからルールの紙が赤く光った。もう一度最初からやり直しだ。」
「…なんの、はなし…?」
「課題には守らなきゃならないルールがある。今回は口付けをしている間1分以上唇を離さない事だ。もし離したら最初からやり直しになる」
「…へ?」
アリスがフリーズする
「すみれ…お前は昔から少し馬鹿だったな。自分の理解の範疇を超えることとなると真っ白になる。変わっていないようだな。」
ランスロットがふっ、と笑う。その笑顔はたしかに昔夢に出てきた少年と同じだった。アリスの心臓がドクドクと音を立てる
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