Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第2章 その場所
リョーマの手がの腰にまわる。
「ちょ、ちょっと待って、リョーマくん……!」
は入口のドアの方を見た。
目線の高さが曇りガラス風になっているとはいえそこを往復する足が見える。室内は暗いとはいえ画面の明るさが自分たちを照らす。
天井には設置されているのかいないのかわからない防犯カメラ。
すでにこんな状態になっているのだから店側から何もないのであれば見えてはいないのだろうか。
「なに?」
リョーマは顔を上げ少し不機嫌そうに声を発した。
ドアの方を気にしているの頬を自分の方へ向けてを見下ろす。
「気になる?」
そんなの当たり前だ。こんなところでこれ以上事が進めば色々あるじゃないか、だからその最後までリョーマとそうなれば色々。
リョーマが事をするのが初めてかどうかは知らないが自分は初めてではないしこの先の流れなんて大体わかる。それに先程までの情事のリョーマのテクニックを思い出せば多分……リョーマにまた口を塞がれるような状況にはなるだろう。
そんなことをもやもやと考えながらはリョーマを見つめ、こくんと頷いた。
ゆっくりと動いたの頭をしばらく何も言わずにリョーマは見ていたがやがてその体勢を変え、に手を伸ばした。
は自分に伸ばされたその手を掴んで起き上がり、ぎゅっと握ったままリョーマの様子を伺う。
「リョーマ……くん?」
握られた左手にやや力を入れながらリョーマはを見ずに少し低めの声でいった。
「アンタが嫌なことはしたくないから」
それを聞いたは一瞬真顔だったがその後ふっと吹き出した。
嫌なことはしたくないって、突然押し倒されて下着まで見られその先にも触れられてしまっていたのに。やっぱりその行為を私が受け入れると確信していたのか。本当にもう越前リョーマには全てを見透かされていて私という人間を理解しているんだ。
「ちょ、何笑ってんの」
先ほどよりもさらに少し不機嫌さが増しただろうか。
リョーマはの方を見て大きなその猫のような目を吊り上げる。
繋がれた手はそのままで。
「ごめん、なんでもない」
まだ笑っているにリョーマは溜息をついて目線を逸らした。
「早く服下ろしてくんない」