Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第2章 その場所
「まだまだだね」
彼が得意とするそのいつもの言葉は、いつもの自信に満ち溢れた言い方ではなく優しく語尾に吐息が残る甘い声。
目頭が熱くなる。
すぐに目の前がぼやけ目尻までそれがあふれ、耳まで流れ落ちた。
それを見つめながらリョーマは言った。
「好きだよ」
先程聞いたその声と同じだった。
今日起きた色んな出来事が頭の中に駆け巡った。
カラオケに呼ばれ、リョーマの隣に座ったこと。
叩き続けた手をリョーマが気にかけてくれたこと。
眠ったふりをしていたこと。
リョーマに突然こうされたこと。
考えてみれば、先を越したのはリョーマのほうで自分は何も先を越していないと思った。本来であればリョーマの行為は絶対におかしなことでそれを受け入れられなかったとしたらリョーマはこの年にして犯罪を犯したことになるのだから。けれどそれをリョーマに勝気に伝えたところで怯むわけはないし私が受け入れると確信を持っていたんだ。
「ずるい」
はリョーマにそう告げた。
リョーマは即言葉を返す。
「鈍感」
リョーマとこんなふうに会話ができるなんて思ってもいなかった。
少なくともリョーマが眠ったふりをしていた時までは。
そう本当についさっきまでこんなふうに会話ができるなんて思ってなかったんだ。
「ねえ そろそろさ 続き したいんだけど」
リョーマのその表情には一度瞬きをしてから手を伸ばしリョーマの唇に触れる。そのまま大好きだよと告げたらリョーマは少し照れたような表情を見せたあと自分の口に触れているの指を握った。