Instead of drink[テニプリ 越前 リョーマ]
第3章 夕暮れ
「お寺の廊下のお掃除は?」
リョーマは あ という顔をして指先で✕を作りながら首を振った。
それを見ながらくすくすとは笑い夜空を見上げる。変わらなく瞬く一番星がもう充分でしょとに伝えているようだった。
「アンタが」
そう言葉を発したリョーマも同じように夜空を見上げていた。あの星を見ているのだろうか。そして一瞬頭を下げ軽く息を吸い込んでからもう一度頭を上げて続けた。
「…さんが」
不意に名前を呼ばれドキっとしたがなんとなくそれをリョーマに悟られたくなくてはそのまま夜空から視線を変えなかった。
「笑ってても 泣いてても 好きとか嫌いとか上手くいかないとか悩んでても」
「そういうさんがいいって思ったから 俺は」
悟られたくなかったのに、悟られてしまいそうだ。この心臓の高鳴りというものが。
リョーマがあの日あの子に伝えたことが明らかに私との差をつけている。そう思った。
リョーマの中で好きなときも嫌いなときも、笑うときも泣いてるときも、そうやって重ねてきたその時間が自分なんじゃないの?とあの子に応えた。きっとあの子はなかなか上手くいかないとかテニスが上達しないとかリョーマに打ち明けたんだろう。自分がいままで重ねてきた時間全部が竜崎桜乃であるとリョーマは応えたんだ。
そして、私には…
「そ、そういう私がいいって、ど…どういうこと?」
リョーマは夜空からの方へ視線を移し軽くため息をついて立ち上がった。
靴で砂を踏む音を鳴らしてリョーマはブランコに座ったままのの前に立つ。
はそのリョーマの姿を目で追いながら目の前で立つリョーマを見上げた。
「ずるくない? そうやって何回も言わせんの」
「ぜんぶ君なんだ」2020.12.28
越前リョーマ/皆川純子
作曲 UZA 作詞 UZA
dreamusic/FEELMEE
より、歌詞の内容を一部文章を変えて(解釈研究含め)引用しています。