Instead of drink[テニプリ 越前 リョーマ]
第3章 夕暮れ
「アンタさ さっき俺が言ったことの何を聞いてたわけ」
右腕に力が伝わってくる。
……リョーマが言ったこと。
たくさんある。さっきっていつだろう。ここでのことか、夕暮れを一緒に歩いた時か、それともカラオケでのことか。
でも
どれを思い出しても、リョーマの言葉はどれも私の中から竜崎桜乃という存在を消せる言葉だったのではないか。
「竜崎は友達だよ」
思い切り振り返った。首の筋が一瞬痛かった。
「なに その顔」
空気を漏らすようにリョーマが笑った。
確かに私の顔は思わず笑ってしまうような顔だっただろう、自分でもよくわかる。
「まったく 怒ったり泣いたり忙しいね」
リョーマはの手を離しの前まで歩を進める。
も体勢を変えて濡れたまつげを軽く拭った。
思い込みが、激しい性格なんだということはわかっている。
被害妄想も激しい。そんなことはひとつもないのにそうだと思い込み自分を孤立させる。
リョーマから欲しかった言葉をたくさんもらったのにいつの間にかそれが姿を変えてまた負やら陰やらが自身に振りかぶるのだ。
振りかぶってきたそこまではわかるしまた同じことを繰り返してるとも理解しているのにそれを振り払う勇んだ気持ちが自分にはまだないのだ。
私は 自分に自信がまったくない。自己否定が趣味のようなものだ。
自己肯定感をボロボロに痛めつけながら息をしているなんて
なんて、悲しいことなんだろう。
ただ 私も
この人と、リョーマと普通に普通の恋愛がしたいだけなのに。
「それ もう1回座る?」
静止したままのの前でリョーマの親指が指したそれはブランコだった。