Instead of drink 《テニプリ越前 リョーマ》
第2章 その場所
更にマイクを口に近づけて大きな声を出す。そんなボリュームにも一向に意識を取り戻す様子もない。揶揄いがいがあるだろう後輩がこんな所で寝てしまって一人また一人と帰っていく。
最後までマイクを握っていたお祭り人間もリョーマは寝ている、ガランとした現状にとうとうマイクのスイッチを切った。
「俺もそろそろ…越前のことよろしくっす。まだ延長時間あるし」
それだけ言って、全員分の金額をテーブルに置きそこから消えてしまった。
え、え!?
よろしくって言われたってどうしたらいいのか。人で密集していたこの部屋も二人だけになれば意外に広くて緊張を増幅させる。
とにかく起こさなければ。
隣で寝息をたてているリョーマを起こそうと顔を覗き込んだ時。
「ひゃ!!」
声を上げたのも無理はない。確かに寝息をたてていたはずのリョーマが顔を覗き込んだ瞬間にその大きな目をぱっちりと開けたのだから。
「やっと、終わったんだ」
軽く体を伸ばして炭酸の抜けきったと思われる飲み物を口へと運ぶ。
は自分の胸の辺りを撫でながらリョーマに声をかけた。
「あ、あの…皆帰っちゃったし…私たちもかえ…る?」
リョーマは、時計を見て。
「まだ時間あるじゃん、勿体ないんじゃない」
そう言ってもう一度飲み物を口に運ぶ。
勿体ない…確かにそうかもしれないけれど。
この部屋にリョーマと二人きりでいることがにはかなりハードルが高い。何も言葉が見つからない。
ただただ、心臓の鼓動が増す。
はリョーマが口に運ぶその紫色の飲み物を見た。
「あ、それもう炭酸ないでしょ?新しいの頼む?」
そう言って部屋の受話器を取ろうとした時何時間か前に起きた事と同じ事が起きた。それは隣から伸びた右手によっての受話器をとろうとする左手が阻止されたこと。
「いらない」
そのまま手を引かれ受話器はその勢いではずれ、コードが床まで伸びた。
「リョ、リョーマくん!?」
あともう少し力が抜ければソファーに背面を奪われそうで。
はそうならないように必死で力を入れる。
「ねえ、なに力いれてんの」
リョーマは覆いかぶさるようにの腰を持ち上げ上にずらす。
は力をそれ以上に入れることができなくてただリョーマを見つめていた。